「ナラ枯れ」 箕面のまちなかへ広がる ~『 社寺林などを守れ!』の声

★ “どんぐりの木”が被害に・・ ★

 

 今までは主に山で広がってきた“どんぐりの木”を枯らす伝染病「ナラ枯れ」が、この夏、箕面のまちなかへ広がり出し、社寺林などで樹木が枯れ出しました。


 被害を受けた神社の関係者(宮司や氏子(うじこ))をはじめ、市民の間から「(身近で貴重な)社寺林などを守る必要がある」との危機の声が出始めてます。

 

【注】どんぐりの木=被害を受けるのは、主に直径10cm以上の高齢のブナ科の樹木(コナラ・カシ・シイなど)。

 

★ 緑の樹林に、突然、枯れ木が・・ ★

 

  「ナラ枯れ」病の原因となるナラ菌を運ぶ虫・カシナガ(カシノナガキクイムシ(樫の長木食い虫=この表記は推定))は前年入った木で産卵・成長し、翌年の初夏(気温約20℃以上)に次世代が大量に飛び出し新しい木に取りつきます。

 

 カシナガは集合フェロモン(分泌物質)を出し、周囲の仲間を呼び寄せます。こうしてカシナガが多数入った木は1か月ほどで枯れることが多く、このため緑いっぱいの夏の樹林に、突然、枯れ木が出現!。

 

 ★ 瀬川の森-被害約50本、うち枯死木は約5本 ★

 

 7/29に、こうした枯れ木が見つかった瀬川の森(瀬川神社+瀬川北公園。連続樹林)に、①地元関係者(神社の宮司・氏子)、②ボランティア(NPO山麓委員会のナラ枯れプロジェクトチーム、NPO花とみどりの街づくり事務局)、③箕面市(動物・自然緑地課、公園みどり課)の約10人が集まり、「ナラ枯れ」を確認し応急対策とともに、森全体の被害を調査。

 

 調査では、被害木は主にコナラで、計51本(うち枯死木は4~5本(枯死中を含む))。

“瀬川の森”の枯れ木(8/18撮影)。右の1/4が公園、残りは神社林=市指定保護樹林。
“瀬川の森”の枯れ木(8/18撮影)。右の1/4が公園、残りは神社林=市指定保護樹林。
上の写真のうち、左端の枯死木(7/29)
上の写真のうち、左端の枯死木(7/29)

 枯れずに生き残る被害木も多いのですが、対策をとらずに放置すると来年にはそこから再び多数のカシナガが飛び出し周辺に広がり、被害は数十倍(平均約50倍:兵庫県立大名誉教授の服部保さん)になる可能性が・・。

きな粉のような「フラス」が吹き出した被害木(瀬川神社の森。7/29)
きな粉のような「フラス」が吹き出した被害木(瀬川神社の森。7/29)
ビニールを巻き応急対策をした枯死被害木(同)
ビニールを巻き応急対策をした枯死被害木(同)

 

★ 阿比太の森では、10本が被害に・・ ★

 

 さらに桜ヶ丘1丁目の阿比太(あびた)の森(阿比太神社+阿比太公園。連続樹林)でも枯れ木(コナラ)が見つかり、8/12に同じく全域調査が行われ、10本の被害木(うち枯死木1本)が見つかってます。

 

 「枯死木1本が見つかると、周りに約10本の生存被害木がある」(ナラ枯れプロジェクト・チームのリーダー竹田さん)。

阿比太神社(市指定保護樹林)でナラ枯れを調査中のボランティア(黄テープ→被害木、赤テープ→うち枯死木。8/12)
阿比太神社(市指定保護樹林)でナラ枯れを調査中のボランティア(黄テープ→被害木、赤テープ→うち枯死木。8/12)

 

★ 現在、まちなか8か所で発見 ★

 

 箕面のまちなかで枯死木などの被害が見つかってるのは、現在までで次の8か所(引き続き情報を収集中)。

 

 【箕面のまちなかの「ナラ枯れ」発見リスト。8/21現在】
◆①待兼山(まちかねやま)の森(瀬川。阪大用地の北端、豊中市域に続く)※
◆②瀬川の森(瀬川神社+瀬川北公園の連続樹林)
◆③阿比太の森(阿比太神社+阿比太公園の連続樹林)
◆④為那都比古(いなつひこ)神社の樹林
◆⑤五字(ごあざ)神社(境内の立木2本)
◆⑥箕面東公園の森
◆⑦東生涯学習センター付近の民有林※
◆⑧豊川支所付近の企業用地の森(茨木市域に続く)※
     ・※印は、いずれも昨年から発生。
   ・②③⑤は、森全体の被害調査済み。

箕面のまちなかの「ナラ枯れ」発生マップ(図の番号は、上のリストに対応)
箕面のまちなかの「ナラ枯れ」発生マップ(図の番号は、上のリストに対応)

 但し、昨年に被害を受けた3か所(※)のうち、一応の対策がとられたのは①のみ。しかし、今年、枯死木を少なくとも2本を発見。
 山林の「ナラ枯れ」へは国(林野庁)などから対策への補助金制度がありますが、まちなかではこうした制度がないようで、昨年は対策があいまいになったと推定されます。

 

 なお、今まで箕面の山などでのナラ枯れ対策としては、被害の著しい「枯死木」などは専門事業者などによる伐採と伐採木の運び出しが難しく現地で薬剤くん蒸(又は運び出しが容易なら焼却。抜本対策)、「生存被害木」の方は主に市民ボランティアなどが幹をビニールシートや粘着テープでおおい初夏のカシナガの脱出を防ぐ(補完的対策)などが行われきました。

 

 まずは森や樹木の管理者(所有者)の責任ですが、社寺林の多くは市の保護樹林に指定されており、何よりも伝染病でもあることから、対策については、現在、市で検討中。

待兼山・三角点(手前の四角い石標)のそばの枯死木(8/17)
待兼山・三角点(手前の四角い石標)のそばの枯死木(8/17)
待兼山のナラ枯れ対策(昨年に実施されたとみられる。8/8)
待兼山のナラ枯れ対策(昨年に実施されたとみられる。8/8)

為那都比古神社・第2駐車場の枯死木(8/8)
為那都比古神社・第2駐車場の枯死木(8/8)
 箕面東公園の枯死木(8/8)
 箕面東公園の枯死木(8/8)

 

【コメント①】~望まれる早期の発見・連絡~


 枯死木は黄葉の季節までが見つけやすく、社寺林関係者や公園管理のボランティアをはじめ多くの市民が見つけていくことが望まれます。


 《発見の目安》
    ① 枯死木がある(落葉樹=コナラなど。常緑樹=シイ・カシなど)
  ② 幹の根元や約4mの高さまで虫が入った直径1mmの穴が多数あり、きな粉状の白っぽい木くず(フラス)が吹き出ている、根元などに溜まっている。


《連絡先》
◇箕面市役所:動物・自然緑地課(被害全般)・公園みどり課(公園や市指定保護樹林での被害の場合)
◇NPO花とみどりの街づくり(090-4901-6693(しげもと))
◇NPO山麓委員会(072-724-3615)

カシナガの大きさは、約5mm(大阪府HP)
カシナガの大きさは、約5mm(大阪府HP)

 

【コメント②】~徹底対策が決め手~

 

 カシナガは飛ぶ力が比較的弱いとされ直接的に(自力で)広がるのは約400mぐらい(国の森林総合研究所。近距離伝染)。

 しかし風に乗ると、遠くへも広がるとみられます(遠距離伝染)。

 

 3年前に箕面東公園で「ナラ枯れ」が発生、この時は管理者の市が徹底対策をとり、この間は今年まで大きな被害は出てませんでした。他地域の例を含め、徹底対策により「近距離伝染」は、封じ込められそうです。

 

 一方、「遠距離伝染」については、今のところは、隣接市町を含め徹底対策により広域的にカシナガの飛来(伝染)確率を下げるなどです。

全山に広がった「ナラ枯れ」の例(林野庁HP=写真提供:一般社団法人 日本森林技術協会)
全山に広がった「ナラ枯れ」の例(林野庁HP=写真提供:一般社団法人 日本森林技術協会)

 

                    (NPO法人 花とみどりの街づくり・箕面  事務局)