箕面川の田村橋横の樹齢70年の桜の大木を含む川辺林(=河畔林。7本余)を、1月に河川管理者の大阪府池田土木事務所が予告もなくいきなりほぼ根元からバッサリ伐採。
長年この水と緑の景色に親しんできた周辺住民などから、驚きと批判の声が・・。
みどりのまちづくりを進める市やNPO(NPO山麓委員会・NPO花とみどり)なども同様の反応・・。
(注)NPO山麓委員会=山のみどり
NPO花とみどり=街(平野)のみどり を担当。
現地は阪急桜井駅まで南へ400m、近くには市立南小学校もあり、日々、この橋を通勤・通学・買い物などで多くの市民が往来。
子どもの頃から付近に住み、今は青少年を守る活動をする女性は言います。
「(子どもたちは自然を大切にと学ぶのに)通学路のすぐ横でこんなことをして・・。子どもたちへの説明はなされたのか。教育面から問題ではないか」
「(桜の花に祝福される)卒業式・入学式を前に、今、なぜ切るのか」
市民からの通報を受けたNPO山麓委員会の問い合わせに、同土木事務所の担当者の次のように答えたそうです。
「(川の横の樹木は治水面で問題があり)護岸の管理上、伐採は必要」
「このようなケースでは、事前告知はしない」
市・NPOなどの関係者は、川辺林が持つ景観・環境面などの公益性から、住民の納得を得て行うのが適切との見方とみられます。
緊急事態でもないのにいきなり伐採するのは、その必要性が客観的に説明(確認)されていないなど問題とみられます。
実は、同土木事務所が管理する箕面の河川を巡り、近年、今回と似た出来事が2つありました。
【1つ目=箕川(みのかわ)のヘイケボタル問題】
市東部の箕川の帝釈寺裏には、箕面では絶滅寸前のヘイケボタルが生き残っていました。
2年ほど前に、突然、土木事務所がここの土砂を除去。コンクリートの川底がむき出しに・・。どうも農業用水の取水を容易にするためのようでした。当然、次の初夏以降、ヘイケボタルは激減。
ホタル保護団体などは、同土木事務所にあらかじめここは「ヘイケボタルの生息地」と伝えていました。その情報が、土木事務所内で希薄になっていたとみられます。
この反省からNPO山麓委員会が働きかけ、府(池田土木事務所)・市・NPO・ホタル保護団体による協議システムがスタート。土木事務所が、ホタルの保護などを各方面と相談するルールが生まれました。
【2つ目=瀬川地区の川辺林保全問題】
箕面川と支流の石澄川(いしずみがわ)との合流点の川際にセンダンの大木が生え、地元瀬川地区のシンボルとなっていました。【写真】
5年ほど前、同土木事務所が治水上の理由からこの大木の伐採を計画。これを住民が事前に察知、1年近く話し合いが行われました。結局は、大木が根を張る背後地の所有者の強い開発意向(後に住宅を建設)で保全は無理となり、住民側もやむをえないとして伐採に至りました。
その後、住民たち(瀬川 親水・散策の場をつくる会)は府(同土木事務所)・市を入れたワークショップ(会合)で話し合い、付近の川辺林について1本ずつ「残す・切る」を検討、大半の樹木は残すことに・・。
さらに、住民たちは川辺林を保全・活用した散策路の整備へと進み、これを受け府が工事を行い、その後の管理は府の「アダプト・リバー」制度に基づき住民が行う・・ということになりました(散策路は、来年度完成の予定)。
住民が納得して治水面で問題の樹木や大枝を伐採しつつ、大半は保全した好例です。
関係者からみれば、これらの事例から池田土木事務所は学ぶべきだ・・でしょう。
市は池田土木事務所に抗議し、再発防止策の検討を依頼したとのことです。
【田村橋の伐採された川辺林沿いの敷地の所有者の話】
池田土木事務所が、最近、付近の川の護岸地の調査を行った。それに伴い戦後すぐの大洪水で斜め向かいの家屋の護岸が崩壊した例などから、自らの敷地に接した樹木が川へ倒れ込むなどの心配を相談した。その結果、切ることに・・。
いざ切る段になり、人気の桜の大木などは枝をせん定する程度で残すよう希望した。しかし「100か、0か です(枝のせん定はしない)」と言われ、根元からの伐採に同意せざるを得なかった。
その反省もあり、伐採直後に新しい桜の苗木を1本植えた【写真】。
どうも土木事務所がこの住民の善意の心配・相談を逆手に取り、やや強行に伐採へもっていったよう・・。
(注)箕面川の治水対策=既に箕面の滝の上方に大きな「箕面川ダム」が建設されており、戦後すぐのような大洪水のリスクは低下、かなりの安全性を確保済み。
【瀬川の川沿いの桜の大木が残った例】
瀬川でも箕面川の「瀬川大橋」の横に桜の大木があるのですが、土木事務所から治水面を考え提案された川面に覆いかぶさった枝の先を切る(せん定する)ことで住民たちも同意、桜の木そのものは保全【写真】。
話し合いこそが、問題を適切に解決していった例。
今のところ、まだ田村橋の上流・下流などの箕面川沿いには豊かな川辺林が残されています。
これらに、今後、どう対処するのかが、当面の課題です。
【コメント】府は川辺林への対応の根本的な見直しを
環境重視の流れの中で、「治水」機能とともに、川辺林など「環境」機能にも十分に目を向けることが望まれます。
この環境重視を受けて、従来の “治水一本槍” を改める方向で1997年(平成9年)に河川法が改正され、府も川辺林を重視する方針を作っています。
また、府は河川について住民と協働していく「アダプト・リバー」制度(住民が河川の清掃などを受け持つ制度)を設けるなどしてきました。
ところが、今回のやり方はこの流れに明らかに逆行??
仮に地球温暖化などを背景に多発しているゲリラ豪雨に伴う洪水リスクへの警戒心などがあるとしてもあまりにも短絡的で、結局は「河川行政」への住民の反発を招き、逆効果でしょう。
府の「河川行政」が今回のような不十分なやり方を続けず、もう一度、根本から見直すことが望まれます。
(参考)大阪府池田土木事務所の担当部署:維持保全課 環境整備グループ
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